Niigata Kenoh Meister 15th Anniversary Project.

Special Movie

Meister Story

ものづくりの達人たち

おめさん、おれの話きいてってくんなせや。

おがこしょたモンこと、だかに喜んでもろのが生きげなんだて。

こんげいい仕事はねぇぞ~。だっれもしたことのねぇこしょいかた見つけて、新しいモンこしょれんだっけの。おれにこしょわんねモンねぇなぁ。そりゃあ失敗だってするこて。でも失敗は成功のもとってゆうろ?失敗したことねぇもんよか、失敗したもんのほうがつよなるし、どうせばいいかってこともいっぺ知ってるんだて。だっけまた一つあたまよぉなったとおもて、さきに行けばいいんだて。おが仕事には自信があるっけ、いつかはできんだてば。でかしたときは、おんもしぇてどぉしょもねんだて。

おがこしょたモンは子どもみてなもんなんらて。子ども嫁にやるんだったら、でーじにしてくれるしょがいっけ、おが持ってくときもある。うれしげな顔みっと100倍やる気が湧いてくるっけの。こぉてくれたしょとしゃべってると、よぉしんばだめんとこもわかっけの、こんどはあぁしょこぉしょってかんげぇが湧いてくるんだこて。

職人仲間とさうぇでる時もそぅらて。職人なかでもいっちゃんごーぎなもんしかなれんにいがた県央マイスターってあんだろも、その連中はいっつも先頭なって仕事してきたもんらろも、まら新しいことしんばだめらゆぅて頑張っているぁんだ。こんが連中としゃべってっと、おれもこぉしてらんねってなるんだて。

なんぎこともあったろも、一緒に戦ってきた仲間って感じらて。連中と飲み始めっと話がつきねぇんだて。ちなみにおれもマイスターなんだて。いい男らてがんねマイスターらってか、照れるてば!いっちょめぇになるまで、てぇへんなことなんかいっぺあっこて。朝はぁいぇし親父はおっかねしで。年とっと自然に早よ起きらいるよぅなんだろもの。遊んでらんねっけ、しょぉがね始めたのぉこて。なんべもやめっかと思たて。

でも男は逃げたらかっこわぁれろ?おれぁ負けんのが嫌らっけ、死んだ気んなってやってたら、どんどんハマってしもた。おんもしぇなってやめらんなくなったんだて。

ものづくりって正直らっけ、一所懸命やればやっただけ返ってくんだて。手ぇ抜くとすぐにバレるんだろもの。こんげおんもしぇ仕事らろも職人はとしょりばっかんなったて。おれぁまら二十歳の気ぃになってんろも、あと何年元気でできっかのぉ。おめさん、だか跡継いでくれるもん知らねかね。かあちゃんは鬼らろも、おれぁ優しくおしぇるっけそんげおっかながんなて。焼いて食わねて。

おれぁまだまだやりてぇこといっぺある。まら怠けてらんねて。動かいるうちは仕事してんばだめなんらてば。おれが頑張ってんだっけおめさんも頑張らんばならんこて。

なんぎこといっぺあんろも、そのうち笑ろてらいるよぉになるっけさ。

おじいちゃんは、
ぼくのMYスター。

ぼくのおじいちゃんはたまにしか笑わない。ほんとに楽しいときにしか笑わない。おじいちゃんは正直だ。嘘がつけない。だからすごく厳しい。自分に厳しい。勘違いされることも多いけど、怒っているわけではない。ほんとは優しい一面もいっぱいあるんだ。

おじいちゃんは毎日同じ時間に同じ服を着て出かけていく。どうやら工場で何かを作る仕事をしているらしい。どんな仕事をしているのか気になってこの間初めて仕事現場を見せてもらった。

そしたら、そこには笑顔のおじいちゃんがいた。あのおじいちゃんが笑ってたんだ。おじいちゃんは仕事をしているときが楽しいのか。家ではあまり仕事のことを話さないから、初めてそんな一面を見た気がして思わずぼくも笑ってしまった。仕事をしているおじいちゃんの背中はかっこよかった。輝いてるように見えた。でも、どこか寂しそうだった。「もうおれの代で終わりだ」と、いつも独り言を言っていたのを思い出した。そういうことか。ほんとは終わりにしたくないんだ。

おじいちゃんが作ったものを見せてくれた。信じられなかった、おじいちゃんがこんなにすごいものが作れるなんて。「おじいちゃんが見つけ出したおじいちゃんにしかできない技もあるんだぞ。」自慢気にそう言っていた。おじいちゃんが作ったものを日本の誰かが、世界の誰かが使っている。そして誰かを笑顔にしているって想像したらなんだかすごくわくわくしてきた。

一人前になるまでに10年もかかったらしい。どれだけの苦労があったんだろう。楽しいことばかりじゃなかったはず。でも、おじいちゃんが弱音を吐いているところなんて一度も見たことがない。

おばあちゃんが言ってたんだけど、数年前おじいちゃんって「にいがた県央マイスター」ってやつになったんだって。この地域の職人の中でも特にすごい技術を持ってる人だけしかなれないやつらしいんだ。かっこいいでしょ? 誰かに自慢したいな。

それから、ぼくも大きくなったらおじいちゃんみたいな職人になりたいって思うようになった。自分の手で世界を変えられるような職人になりたい。そしていつかおじいちゃんのことも越えてみせる!

いつの間にかおじいちゃんの背中を追いかけるようになっていった。ちょっと照れくさいけど思い切っておじいちゃんに気持ちを伝えてみた。すると、おじいちゃんはなんだかうれしそうな表情を浮かべたように見えた。それから、おじいちゃんはよく笑うようになっていった。

マイスター小学校 3年1組 県央太郎